環境基準についてNo2(制定の経緯)

query_builder 2023/07/09
土壌汚染対策水質汚濁

皆さん、こんにちは。行政書士の久保山です。

 

今日は環境基準の設定について(国立環境研究所資料から)お話しします。

 

環境基準設定の経緯について


環境基準1967年(昭和42年)に制定された公害基本法第9条に、「人の健康を保護し、及び生活環


境を保全する上で維持されることが望ましい基準」と規定されたのがはじめです。


この環境基準環境基本法にも引き継がれています。

 

公害防止に関する施策を進めるうえでの行政の努力目標である環境基準等がどのよ

 

うな科学的根拠のもとでどのように決められたのでしょうか。資料に沿ってみていきまし

 

ょう。

 

環境基準の位置づけと性格

 

環境基準は先にみたように公害対策基本法第9条第1項に規定され、同条第4項で「政

 

府は、公害の防止に関する施策を総合的かつ有効適切に講ずること

 

により、環境基準が確保されるよう努めなければならない」と規定され

 

ており、公害防止に関する進める上での政府の努力目標であることが明示されて

 

います。

 

この規定は1993年(平成5年)に制定された環境基本法第16条に引き継がれ

 

ています。

 

環境基準設定の対象は当初、大気の汚染、水質の汚濁、騒音の3分野でし

たが現在、土壌の汚染の分野も環境基準が設定されています。

 

なお、ダイオキシン類については環境基本法ではないダイオキシン類対策

 

特別措置法第7条の規定に基づいて大気、水質(水底の底質を含む)、


壌という環境媒体ごとに定められています。

 

環境基準は人の健康を保護し生活環境を保全する見地から、発生源の集積による汚染を

 

対象とする施策を打ち出すために有効と考えられ、公害対策基本法に規定されました。

 

環境基準は行政上の目標です。「維持されることが望ましい基準」です。

 

境基準を最大許容限度や受忍限度とする考え方をとれば、人の健康等の維持のための最

 

低限度として、あるいはこの程度までの汚染は我慢しなければならないという消極的なも

 

のになります。しかし、「望ましい基準」とすることで、より積極的な行政上の

 

目標としての性格をもっています。

 

環境基準が定められると、その維持・達成のための施策が講じられ、例えば大気汚染や

 

水質汚濁については、多くの場合、排出基準が設定されて工場・事業所に対して遵守が

求められます。排出基準に関しては守らないと罰則が適用されますが、環境基準


合には行政の目標ですので、守らなければ罰則があるというものではありません。

 

(土壌の環境基準は少し性格が違います。)

しかしながら、行政が達成率を評価し、必要があればその改善のため、更なる対策が必要と

 

なります。

 

次に環境基準の目的についてみていきましょう。

環境基準の目的は何でしょうか。

「人の健康の保護」と「生活環境の保全」の二つです。

 

まず、「生活環境の保全」とは、何でしょうか。大気や水の清浄さや静けさ、大

地の安定が保たれることによる生活の快適さ、便宜さを維持することとされてい

 

ます。また、人の生活に密接な関係のある財産、人の生活に密接な関係のある動

 

植物及びその生育環境を含めた意味で「生活環境」という言葉が使われています。

では、実際に公害問題として注目された事件の中に農作物(カドミウムによる「イ

タイイタイ病」)魚介類(有機水銀による「水俣病」

家具や商品が腐食する(酸化硫黄ガス)など見られます。人への影響もさることながら、


農作物が枯れたケースや魚の奇形も問題となりました。

 

大気の汚染に関する環境基準は、植物などへの影響について検討された項目もあります

 

が、今では人の健康の保護の観点のみから設定されています。

 

また、水質汚濁に係る環境基準については人の健康の保護の観点


と生活環境の保全の観点とで異なる項目について設定されており、


土壌の汚染や騒音に係る環境基準は両方を考えたものになっています。


また、ダイオキシン類対策特別措置法に基づくダイオキシン類の環境基準


については全ての環境倍体について人の健康の保護の観点から定められています。

 

環境基準の決め方についてみてみましょう。

 

環境基準については環境庁設置以前から厚生省において

大気汚染及び騒音工場騒音イラスト に対する画像結果に関し、

 

経済企画庁において水質汚濁に関し、それぞれ審議会等において検討が開始され、一部

 

の項目につて決定がなされていました。

 

1971年(昭和46年)の環境庁設置後は環境庁及び中央公害審議会がそれら業務を引き

 

継ぎ、環境庁告示によって環境基準が設定されるようになりました。

 

1970年代には、大気の汚染、水質の汚濁及び騒音に係る環境基準が設

 

定され、1991年(平成3年)には土壌の汚染に関する環境基準が設定されて

 

います。

 

環境基準については、環境基本法第16条第3項



「第1項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、


必要な改定がなされなければならない」


と規定されていて、基準項目の選定や基準値の設定にあたっては、まず、環境省におい

 

て科学的知見が収集・整理された後学識経験者で構成される中央環境審議会において審

 

議がされ、審議会の答申を得て行われるのが一般的です。

 

以上、環境基準について見てきました。

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